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1998年8月10日放送分 自ギャグの詩 - 深夜の馬鹿力データベース

1998年8月10日放送分 自ギャグの詩

 あれは、僕が小学校6年生の頃だったと思います。
 その頃の僕は男子として男の強さへの憧れと、実際の子供としての弱さのバランスに揺れていた時期だったと思います。
 例えば、夜中にトイレに行くのが何となく怖くもあり、面倒臭くもありという少年でした。
 僕の家は3階建てで、1階におばあちゃんの部屋があり、2階にはお父さんお母さん、まだ小さかった弟も寝ていました。結構広い家の中で3階には僕1人だけの部屋がありました。
 その頃、ジャッキー・チェンの映画を頻繁にテレビでやっていた事もあり、僕は自分の部屋で体を鍛えるのが趣味でした。
 買ってもらった鉄アレイやサンドバックなどもあり、腕立て伏せや腹筋などをやっていたのですが、たまたま近所の散髪屋で読んだ『空手バカ一代』という漫画を読み、気分はすっかり武道家で、その真夏の8月に部屋を閉め切って電気ストーブをわざわざつけて合羽を着て汗だくで修行もどきをしていたりしたのです。
 しかし、夜はその部屋に布団を敷いて寝る訳ですが、僕の部屋からトイレまでが離れていたのと、トイレに行く途中にインテリア風の大きな鏡があり、夜にその鏡の前を通るのがなぜか怖かったので、トイレに行くのは不可能でした。
 そんな訳で、トイレの代わりにどこで膀胱一杯に溜まったおしっこをしていたかというと、修行の際に使っている電気ストーブの横の方に水を入れるコップがあり、水の代わりに毎晩おしっこを入れていました。
 今考えると、電気ストーブは毎日のように精神鍛練の名のもとにガンガンにかけていたので、部屋の中はアンモニア臭が立ち込めていたのですが、僕はその臭いに慣れていたのと好きだったのとで別に気になりませんでした。

 そんなある夏休み中、学校の登校日があったのですが、僕はたまたま熱を出していたので行けずに家で寝ていました。
 すると2階からお母さんの呼ぶ声が聞こえ、3階に数人が上がってくる足音が聞こえました。
 僕はなんだろう、誰だろうと考えていると、ドアをノックしてパカッとドアが開きました。
 ドアの向こうには同じ班の男子女子がいました。女の子3人の中には僕が好きだったHさんとクラスでも可愛いと人気があるIさんもいます。
 みんな、「大丈夫?」と優しい声をかけて部屋の中に入り、まだ横になっていた囲むように座りました。どうやら先生に言われてお見舞いに来てくれたようです。
 横になったまま男子と話していると、ふとHさんとIさんが顔を歪めて黙っています。
 「どうしたんだろう?」と思っていると、男子の一人がストレートに「この部屋しょんべん臭くねぇ?」と言い、僕はハッと気が付きました。
 僕は慣れているので気付きませんでしたが、部屋の中はボロい公園の汚いトイレの臭いがしていたのでしょう、みんな黙り込んで冷たい時間が流れていきました。
 僕は言い訳を必死に考えていましたが、焦れば焦るほど言葉が出てきません。
 男子はともかく、HさんとIさんは僕の事をどう思っているのだろうと想像しただけで死にたくなりました。

 僕はもう学校には行けない。行ったらあだ名は小便小僧に決まる。

 言葉には出来ない絶望感で固まっていました。

 どれぐらい時間が経ったでしょうか、しばらくしてお母さんがお盆にスイカを乗せて部屋の中に入ってきました。
 普段から「オレの部屋は神聖な道場だから決して入るな」ときつく言っていたので、この時初めて母さんもこの異様な臭いに気が付いたようで、「あんた何なのこの臭いは!?」と大声で言いました。
 みんな、ただただ黙って座っています。
 ここで僕がどうしたか。どういう行動に出たか。皆さん、お察し頂けますでしょうか。

 そうです。答えは逆ギレでした。

 僕は今まで横になった布団から脱兎のごとく飛び起き、みんなの腕を強引に掴んで無理矢理立たせ、背中を押してドアの外に押し出しました。
 もちろん今まで手も握った事の無いHさんとIさんも逆ギレ状態の僕は乱暴に体を押して外に追いやりました。
 その間、「もういいよ!出て行けよ!帰れよ、もう!どうでもいいだろ!勝手に来んな出て行けよー!」などと叫んでいました。
 部屋の中で一人立ち尽くしました。
 ドアの外では小さな声で母さんが「すいませんね、せっかくお見舞いに来て下さったのに、バカな息子ですいません。」とみんなに謝っています。
 その後、来た時の半分ぐらいの足音がして、みんなが帰っていきました。
 僕は一人で立ったままだったと思いますが、その後自分が何を考えどうしていたのかよく憶えていません。

 それから学校で友達と仲良くした記憶もありません。それまではKさんやIさんとも楽しく話をしていましたが、その後は会話をしたのかどうかすらも分かりません。
 夏にスポーツをやる事はなぜか無くなりました。
 今、僕は昔を思い出そうとするとなぜか伏せ目がちになっています。

 伊集院さん、伊集院さん。僕は大丈夫でしょうか。
 今、今ね、僕の部屋に友達を入れても、変な臭いはしないんでしょうか。
 かなりの無臭コロンを置いている現在でも心配です。

 (ラジオネーム:上腕二頭筋)


 夏といえば、思い出す事があります。
 伊集院さん、お誕生会というのは、小学生にとってかなりビッグなイベントですよね。
 しかし、そのイベントの大きさがビッグならビッグなだけ、そこでのダメージは大きくなりますよね。

 あれは、小学校2、3年あたりだったと思います。僕のクラスには僕と全く誕生日が同じHさんという女の子がいました。
 事の始まりはHさんがくれた1枚のカードでした。
 カードには「お誕生会をやります。みなさん、必ず来て下さい。」的な事と、場所(Hさんの家)と日時が書いてありました。
 僕の誕生日は8月10日で夏休み中なので、「皆を招きにくいのでお誕生会禁止」という自分で作った自分法に従い、納得していました。
 しかもうちが特に生活に困っているわけでもなく、8月10日にちゃんと家族で祝ってくれる事と、ちゃんとした注文通りのプレゼントを用意してくれる事から、僕はそれで十二分に満足していました。いや、満足しなければいけない法律なんです。
 大人子供の僕はそう考えていました。
 しかし、Hさんのカードの日時の所には8月10日ではなく、「8月10日は夏休み中なので1学期の終業式の日にやります。」と書かれてありました。
 これには僕も驚きました。こんな法の盲点があったとは。僕の中の、僕が作った風雲たけし城が白い服を着た濃いおっさん一人にぶち壊された気分でした。
 しかし当時の僕は大人子供だったので、表面上は平然としていました。
 クラスの全員が僕とHさんの誕生日が同じ事を知っていたので、クラスの、特に男子は「お前の家じゃお誕生会やんないのかよー?」とか「お前の家でお誕生会やんなら、オレそっち行くぜ。」とかありがた迷惑な事を言っていましたが、ここで普通の自ギャグなら「ぼ、ぼ、僕の家でもあるよ。」とか言ってしまうのでしょうが、僕は当時から後先をきちんと考えて行動する嫌な大人子供だったので、「うちは、家族だけでやるからいいんだ。」と言ってごまかしました。
 正直に言います。僕は本当に悔しくはありませんでした。
 しかし、もしHさんの会に出て、その会場で人から「お前、おんなじ誕生日なのにお前は誕生会やらなくて可哀相だな。」という目で見られたら嫌だなぁ。
 こう思うと、僕の大人ダムが人前で崩壊してしまうと考え、僕はHさんには何も言わず、お誕生会には行かない事に決めました。
 悔しい訳ではなく、クラスメートの可哀相EYESが嫌だったからです。

 当日、僕はHさんのお誕生会にクラスで唯一と言っていいぐらい呼ばれなかったM君と一緒に遊びました。
 M君はおとなしいタイプだったので小学生の中では浮いている存在でしたが、僕は割と気の許せる友人でした。
 M君と遊んでいるうちに、Hさんのお誕生会が始まる時間になりました。遊んでいる最中、僕は周りの人たちから「僕とM君はお誕生会に呼ばれなかった可哀相な人たち」という目で見られているのではないかと考えてしまいました。
 僕はほんの少しだけHさんのお誕生会に行ってやってもいいかなという気にもなりましたが、僕だけが呼ばれているので、M君を置いていく訳にもいきません。
 考えた結果、僕はM君に、
 「やっぱりさ、Hさんのお誕生会行ってみない?M君はさ、多分、Hさんが呼び忘れただけだって。僕がちゃんと交渉するから、な、な。行こうよ。行こう。Hさんのお誕生会。」
 こう言ってあんまり気の乗らないM君を強引に連れて、Hさんの家に30分位遅れて行きました。そこには皆集まっていましたが、まだ会は始まっていないようでした。
 僕はM君の事をHさんにきちんと説明しようとしたその時、クラスの悪ガキNo.1のYが、
 「おい、M、お前は呼ばれてないだろ?だったら帰れよ。」
 この後は周りの男子とカエレコール。
 M君は僕とお金を出し合って買った練り消し300円分とドラクエの文房具という、それさえ持っていれば学校での人気者間違い無しというプレゼントをその場で男子に投げつけたとしても許されるぐらいの屈辱を受けていました。
 しかし、僕よりさらに大人に近い子供だったM君は、共同プレゼントを僕に小さな声で「はい。」と言って手渡してきました。
 泣いてはいませんでしたが、かなり悲しそうな顔に感じました。M君は走って帰ってしまいました。
 僕のせいでM君を悲しそうな目にあわせてしまったと思い、こんなYのような奴のいるお誕生会にはいられないと思い、僕も帰ろうと思いました。そしてこのプレゼントはM君と分けようと思いました。
 そしていざ帰ろうとしたその時、Hさんのお母さんが台所から出てきて僕を止めましたが、ここで思いも寄らぬHさんのお母さんの発言が僕を狂わせ始めました。

 「ケーキまで用意したんだから、帰るんならケーキ食べていきなさい。」と言いました。
 ケーキにちょっと心は揺らぎましたが、「ケーキはいつでも食べられる。それよりM君の方が大事だ。」と思ったその時、ふとテーブルの上を見るとそこにはケーキが2つあり、1つにはHさんの、そしてもう1つには僕の名前が書いてありました。
 Hさんとお母さんは誕生日が同じ僕の誕生会を兼ねて計画してくれていたのです。
 僕は悩みました。
 嫌な奴No.1のYがいる事の嫌さ、みんなの前でろうそくを消したいという気持ち、M君が気になる事などが僕を悩まし、みんなが歌ってくれる歌の中で僕はろうそくを消しました。
 その後みんなは僕とHさんの2人分のプレゼントを用意してくれていました。
 恥ずかしながらこの時点でM君の事は微塵も僕の心に残っていなかったと思います。
 その後ご馳走を食べたり、マットでやるファミコンなどをして遊んだ記憶があります。
 後でHさんにM君の事を聞いたら、「呼んでも良かったけど、呼びにくかった。」との事でした。

 夏休みが明けて初めてM君に会った時、意外にも普通にM君が喋ってくれました。彼は多分、僕の考える小学生の領域を完全に超えた大人ではなかったのかと今でも思います。

 伊集院さん、僕は文章が下手で、あまり上手く書けなくて、まだまだ書きたい事はたくさんあります。
 M君の心の中とか、M君の気持ちとか、夏休み明けのM君の心の中とか、上手く書き切る事は出来ません。
 僕は今年の19歳の誕生日にはHさんと共催という形でまたお誕生日会を開く事はできますか?
 そしたらM君は来てくれますか?
 マットのファミコンできますか?
 ガキ大将のYは立派な大人になりましたか?
 教えて下さい。

 (PN:蓮芳さんに追いかけられる夢を見ました)

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