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1998年7月6日放送分 自ギャグの詩 - 深夜の馬鹿力データベース

1998年7月6日放送分 自ギャグの詩

 あれは、高校2年の時でした。
 2月14日。
 私には何事もなく過ぎてしまうのが恒例になっている日です。
 しかし、私はチョコレートを貰えない事に対して落ち込んだりするのではなく、「俺の良さは女には分からないさ」と逆に優越感に浸り、これも口に出すと負け惜しみに聞こえるので暗にこんなイベントとは無関係な自分を誇示するような態度を取るという、かなり屈折した過ごし方をしていました。それが僕なりのプライドの保ち方でした。
 その年も何事もなく帰りのホームルームの時間になっていました。
 正直に言いましょう。
 この時点で「義理チョコはプライドが許さないまでも、ま、本命をもらう分には俺のプライド的にも大丈夫かな。」と思ったりもしましたが、私に限ってそんな事がある訳も無く、逆に「うん、そうだ。この状況がやっぱり自分に合ってるな。」と妙な居心地の良さを感じていたと思います。

 ホームルームも終了。となれば、この日の行事に無関係である事を誇示するためにも、誰よりも早く帰ろう。
 教室のドアを開けようとしたその時に事件は起こりました。
 数人の女子が私の前に立ちはだかり、私が帰ろうとするその行く手を阻むのです。
 といっても、もちろんその後告白されたという話ではありません。友達にチョコレートを渡してくれと頼まれたという、ありがちの話でもありません。
 クラスの女子から、男子全員にチョコレートを配るから待ってくれ、とのことだったのです。
 しかもただ配るのでは面白くないから、男子女子それぞれくじを引いてくじが一致した相手同士でチョコレートの受け渡しをするという段取りまでが既に決められていました。
 ご丁寧に女子の手作りのくじに書いてあったのは、1とか2の数字の代わりに、『君の瞳をタイホする!』などの当時のドラマのタイトルという、こちらとしてはご勘弁頂きたい物で、私は帰ろうかなとも思いましたが、元々クラスの中での評判が良くない、ま、正確に言えば間違いなくワースト1の私が、またそんな嫌われるような事をしたらクラスでの居場所が無くなると思いました。
 元来私はクラスの中では孤立はしていても人に危害は加えない、いわば一匹羊のつもりでしたので、そんな和を乱すような事は出来ず、仕方なく教室に残り、くじで合った女の子からチョコレートをもらい、後は全ての抽選が終わるのを待っていました。

 その時です。
 クラス中を見渡して、ある事に気づいたのです。
 私を除くクラスのほとんどの人間が楽しそうにしているのですが、その笑顔にはどうも2種類あるように思えたのです。
 いや、間違いなく、2種類あると確信したのです。
 男子の笑顔はまるで小学生のように無邪気なものでしたが、女子のそれは私たち男をまるで数段上の位置から見下しているかのようなものに感じられたのです。
 女子の笑顔が「モテないあなた方にチョコレートをお情けでくれてやるわ。」と言っているように思えてきてならないのです。
 その時、気づいたのです。私の小さなプライドに対する、このチョコレートの持つ意味を。
 それは考え過ぎだったのかもしれません。
 しかし、このチョコレートを受け取ってしまえば正真正銘、疑いようも無い、義理チョコをもらって喜ぶという、気は良いのかもしれないがプライドはないその他大勢のブサイクと同じだと思われても仕方無くなります。
 つまり、女子の行為が私にとって暴力に等しい物に思えました。
 恐らく、女子の中でもほんの一握りの人間が言い出し、その他の大多数の女子はそれに付き合っていただけでしょう。
 しかしその時の私は、チョコレートももらえない男子を気遣っているつもりになっている一部の女子の自己満足と、クラスでの居場所を確保するために最後の小さなプライドを忘れてしまった自分が許せなくなっていました。
 家に持って帰ったら一生悔いが残るし、一部の女子の偽善行為を認めてしまう事になるとも思いましたが、やはり今さら女子に突き返したり、教室に置いて帰ったりする事は出来ませんでした。
 なにせ一匹羊ですから。
 そしてそんな私に追い討ちをかけるかのように、担任の教師が締めの一言。
 「これで男子は全員、少なくとも1個はチョコレートを家に持って帰る事ができますね。」

 その後、どのようにして教室を出て廊下を歩いていったかは憶えていません。
 気が付いてみれば、一階の売店の所まで来ていました。売店には燃えるゴミ用のゴミ箱が置いてあります。
 私がどうしたかについては、ご想像にお任せします。

 伊集院さん、私は大丈夫だったんでしょうか。

 (PN:巨人中日戦の勝利打点は審判でリーグトップ)

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